木造の新築注文住宅を建てるにあたり、どのような外壁を選ぶべきか、どの材料を使えば固定資産税が安くなるのか、元固定資産税家屋担当者がお伝えします。
外壁の仕上材料について
上の表は外壁の仕上材料ごとの評点(ほぼ金額とイコールと考えてください)を示したものです。
木造住宅における評点です。
一般的に使われる材料で評点順に並べると以下のとおりとなります。
薄付外装吹付仕上 < 板張 < 鋼板(平板) < 薄型気泡コンクリートパネル < サイディング < 漆喰壁 < 外装タイル
一番安い薄付外装吹付仕上で5,900点、一番高い外装タイルで11,890点となります。
正確に言うと、これに床面積1平方メートルあたり1.2をかけるのですが、そこまで考えると難しくなるのでここでは説明を割愛します。
なお、1点=ほぼ1円と考えてもらって結構です。
単純に固定資産税を安くしたいだけなら、薄付外装吹付仕上が一番お得ということになります。
では、薄付外装吹付仕上とはどういうものなのでしょうか?
以下にそれぞれの材料について説明していきます。
薄付外装吹付仕上について
薄付外装吹付仕上(5,900点)と聞いてもピンと来ない方が多いかもしれませんが、要はモルタル下地の上に色を吹き付けて塗装した壁のことです。
昔はよく見られた仕上ですが、数年すると表面にヒビ割れが出るようになるので、あまり見かけなくなりました。
しかし、技術革新がされてヒビ割れしにくい塗装方法が開発されたようで、再び見かけるようにもなってきました。
板張について
板張(6,480点)は読んで字のごとく、木製の板を貼り付けたもの全般を指す仕上げです。
主に杉やカラマツ、ひのきがよく使われるようですね。
昔は表面を火であぶって、防腐加工するものがよく見られました。
昔は材質によって点数が変わりましたが、今はどんな木材を使ってもすべて板張として扱うのが基本となっています。
お値段高めの木材を使っても評点は安めなので、和風の家を建てる方にはおすすめしたい外壁です。
鋼板・平板について
鋼板・平板(6,610点)というのは、ガルバリウム鋼板を代表とする金属製の板を指します。
ガルバリウム鋼板は屋根の材料にも使われる比較的安価で加工しやすく、金属にしては錆びにくい耐久性にも優れた材料です。
以前は黒、青、赤くらいしか見かけませんでしたが、最近はカラーバリエーションも増えているようです。
金属製サイディングと見分けがつきにくいので、担当者としては困ることが多々ありました……
薄型気泡コンクリートパネル薄付外装仕上について
薄型気泡コンクリートパネル(7,100点)はALCパネルとも呼ばれる薄型のコンクリートの板です。
耐火性の高い材料で断熱性にも優れています。
万が一燃えた場合でも、有毒ガスを出さないという特長があります。
このパネルの上に塗装がされているような仕上げをしている外壁はこの評点で取ります。
旭化成ホームズのヘーベルハウスはほとんどがこの外壁仕上です。
サイディングについて
サイディング(7,530点)は金属系、窯業系、木質系、樹脂系に分かれますが、固定資産税の評価上では、すべて同じ点数を取ります。
サイディングは一番ポピュラーな外壁仕上です。
要は模様の付いた板を貼り付けていく仕上方法です。
窯業系が一番デザイン豊富ですかね。
レンガ風からタイル風、さらにはカラーバリエーションが多いです。
出来のいいサイディングだとタイル張りと見分けるのが難しいくらいです。
金属系はガルバリウム鋼板と見分けがつきにくいのですが、一枚板なら鋼板、何枚もの板を貼り付けているならサイディングと扱われることが多いです。
木材系、樹脂系サイディングについても同様です。
漆喰壁について
漆喰壁(11,640点)というのは、昔ながらの日本家屋やお城にある白い壁をイメージしてもらうのがわかりやすいですかね。
石灰に粘土などを混ぜて作られるものです。
日本の風土にあった外壁材料かと思われます。
湿度を調整する効果が高く、メンテナンス次第では100年もつと言われています。
加工に手間がかかるので固定資産税上でも高めに設定されています。
また、下の図のような珪藻土(藻などの化石からできた海の底から取れる土)を外壁に塗った場合、漆喰壁で点数を取る市町村もあります。
また近年モルタル塗りの技術が発達しているので、薄付外装吹付仕上では安すぎると解釈してこちらの評点を使う市町村もあります。
外装タイルについて
固定資産税上、一番高く付く仕上材料が外装タイル仕上(11,890点)です。
文字通り、タイルを外壁に貼ってある仕上です。
レンガ風、焼き物風、石積み風など様々な種類があります。
サイディングは板と板との隙間があり、そこを樹脂などでコーキング加工して埋めてあるのですが、タイルにはそのようなものがありません。
タイルは耐火性、デザイン性に優れ、メンテナンスをあまりする必要がない長持ちする材料です。
そのため、初期費用が高くなるのが難点ではありますが、長い目で見れば得な仕上材料かもしれません。
断熱材について
最近の住宅なら、必ずと行っていいほど、外壁の内側には断熱材が使用されています。
隙間風を防いで住宅の温度を保つ材料です。
防音効果もあります。
ロックウール、グラスウールなどの種類があり、固定資産税上では「上・中・並」の三段階に分かれています。
目安としてはポリウレタンだと「上」、厚めのグラスウール、ロックウールだと「中」、薄めのグラスウール、ポリスチレンだと「並」となるわけですが、実はすべて「中」か「並」で統一している市町村が多いです。
なぜかというと、家屋評価に行った際、家主から提供される図面にはバラツキがあり、断熱材にどの材料を使っているかまで表記されている図面が少ないからです。
住宅メーカーによるのですが、細かく書いてあるメーカーの家だけ「上」にするわけにもいきません。
壁を剥がして確認することなど不可能ですから、すべての住宅で統一することになります。
ただし、防音室のある住宅は断熱材を「上」評価にしたり、反対に小さな小屋など簡易な建物は「並」にする、あるいは「使用されていない」とするなどの差をつけることはあります。
まとめ・住宅のタイプによって選択肢は変わります。
では、どの外壁材料を選ぶのがお得かということになるのですが、まずは建てる住宅が和風なのか洋風なのか、木造なのか軽量鉄骨なのかということで変わって来ます。
和風でも純和風の無垢の木を使った住宅にするのであれば、選択肢としては板張か漆喰壁になるかと思われます。
漆喰壁は耐久性も高く、長持ちしますが、建築費としても固定資産税上も高くなります。
それに対して板張はどのような木材を使っても板張として一括で扱いますし、高価な板を使っても固定資産税上は点数(6,480点)が変わりません。
純和風住宅を建築予定で、予算に余裕がない場合は板張をおすすめしたいですね。
洋風の住宅や軽量鉄骨、標準的な木造住宅を建てるのであれば、やはりサイディングが安価ですし、固定資産税上でもあまり点数(7,530点)が高くありません。
デザインも豊富でどのようなタイプの住宅にも使えるので、おすすめですかね。
ただし、寿命は20年から30年と言われていますし、長持ちさせたいなら、途中で塗装をし直す、コーキングをし直すなどのメンテナンスが必要となるでしょう。
もっとも、メンテナンス自体はどのような材料でも必要なものではありますが。