住宅には当然屋根があるわけですが、形や材質で固定資産税額は変わってきます。
では、どのような屋根にすると安いのでしょうか?
屋根の評価について
上の図は木造住宅における屋根の評点数を表したものです。
※ネット上で公開されている京都市の手引を参照しました。
必ずしも「点数=円」というわけではないのですが、ほぼイコールなので、同じものとして説明します。
点数が高いほど金額も高くなります。
屋根の種類について
屋根構造は固定資産税上は「陸屋根」と「勾配屋根」の2つにわかれます。
勾配屋根というのは読んで字の如く、傾斜、勾配がある屋根です。
一方、陸屋根というのは、軽量鉄骨の家などでよく見かける平らになっている屋根です。
木造の家だと、屋上を庭園や洗濯物を干す場所にしている家によく見られる形です。
勾配屋根は瓦やスレートが置かれますが、陸屋根は傾斜がないので金属板やシートで防水対策が取られます。
屋根の材質について
屋根の材質について、先程の表を見てください。
陸屋根の場合
陸屋根の場合は点数が高い順に並べると「金属板防水」>「FRP防水」>「防水シート」の順となります。
最近は高性能の防水シートが開発されてきているようですが、一般的な住宅だとやはり金属板防水が多いですね。
特にステンレス板をよく見かけました。
防水シートの屋根材は安くなりますが、雨漏れを恐れるなら、やはり金属板防水になるかと思われます。
しかし、近年大手メーカーが優秀な防水シートと雨漏れを防ぐ工法を開発したので、固定資産税担当としては、この防水シートを安いままの扱いにしておいていいのだろうかという議論がありました。
しかしながら、この選択肢の中では防水シート扱いにするしかないため、安い扱いになっています。
次の基準年で新しい項目ができているかもしれません。
勾配屋根の場合
勾配屋根の場合、点数の高い順に並べると
「建材型ソーラーパネル」>「瓦」>「スレート」>「金属板」>「アスファルトシングル」
となります。
瓦について
「瓦」には(上)と(中)の2ランクがあります。
昔は(特上)なんてランクもありました。
こだわった和風建築によくある細工のされた瓦は(上)判定となります。
最近はあまり見かけないですが、下の画像のような鬼瓦や一文字瓦と呼ばれるものですね。
瓦(中)と判定されるのは陶器瓦、平板瓦と呼ばれるような瓦です。
最近の家は、和風の家でもほとんどがこれらの瓦であることが多いです。
こちらはそれほどコストが高くありません。
金属板について
金属板はいくつかの種類に分かれていますが、一般的に見かけるのはガルバリウム鋼板と呼ばれるもので、上記の中では「金属板鋼板」に当たるものです。
「金属板銅板」は高いからか、あまり見かけません。
ガルバリウム鋼板は加工しやすいものだからか最近人気のようで、よく見かける屋根材となっています。
外壁などにも使われています。
繊維強化セメント板について
繊維強化セメント板とは、いわゆるスレートと呼ばれるものです。
セメントに繊維などを混ぜて作られた板状の屋根材です。
「スレート波板」と「化粧スレートボード」に分かれますが、通常、住宅に使われるのは「化粧スレートボード」です。
「カラーベスト」「コロニアル」という商品名で作られているものも、固定資産税上は「化粧スレートボード」として扱われます。
アスファルトシングルについて
アスファルトシングルというのはアメリカやカナダでよく屋根材に使われているもので、ガラス基材にアスファルトを浸透させ、表面に石粒を吹き付け接着してある屋根材です。
シート状で薄くて扱いやすいので、複雑な屋根形状にも対応することができます。
軽量で錆びにくい優れた材料なのですが、薄いものなので強風に弱い面があります。
そのためか、固定資産税上は少し安めとなっています。
建材型ソーラーパネルについて
屋根材料としては「建材型ソーラーパネル」が固定資産税上、一番高いものとなります。
ですが、これは建築基準法で認められている”屋根そのものがソーラーパネル”となっているものです。
建物の登記には必ず屋根材料が何かを示す必要があるのですが、そこで「ソーラーパネルぶき」として登記されると屋根材料は建材型ソーラーパネルとみなされます。
いわゆる下の画像のような後付の太陽光パネル(ソーラーパネル)とは別物です。
太陽光パネルは瓦やスレートの上に載せられているもので、発電設備のようなものと考えるため、屋根材料としての評価対象になりません。
なので、固定資産税を安くしたいのなら屋根そのものをソーラーパネルにするより、ソーラーパネルを屋根の上に後付したような形として載せるほうが安くなります。
なお、屋根材料の登記は複数にもできます。
「ソーラーパネルぶき、スレートぶき」と併記されている登記もよくあります。
建材型ソーラーパネルを日当たりの良い南側しか使っていないなら、建材型ソーラーパネルぶきとして扱われるのはその部分だけです。
他の部分がスレートなら、例えばスレート75%、ソーラーパネル25%という具合に割合を出して計算します。
屋根の形について……高くなる屋根の形は?
上の図は勾配屋根における屋根の形をいくつか例示したものです。
数字は補正する係数です。
数字が大きいほど、値段が高くなると考えてください。
屋根材の点数に面積をかけたあと、最後にかける数字となります。
入母屋、越屋根、腰折れ、マンサードと言った形式の屋根は、形状が複雑で工法としても難しいということで、少し高くなる仕組みとなっています。
昔は片流れ屋根は(0.8)だったのですが、今では(1.0)となっています。
工事費としては今も他の屋根より安いようですが、固定資産税上は切妻や寄棟と変わらなくなっています。
家の形状によっては、屋根の形が二種類になることもあるかと思います。
その場合も面積の割合によって計算されることになります。
屋根勾配や軒出について
屋根勾配について
屋根勾配については4.5~5.0/10程度を標準(1.0)とみなします。
1.5/10程度の緩やかな勾配になれば(0.85)程度、逆に9/10程度の急な勾配になると(1.20)と補正され高くなります。
つまり、固定資産税上は勾配が緩やかなほど安くなります。
しかし、なぜ屋根に勾配があるかと言えば、雨や雪などが効率よく流れていくためですので、安くしたいからと言ってとにかく緩やかにすればいいものではありません。
特に雪がよく降り積もる地域の方は気をつけてください。
また屋根の資材(瓦やスレートなど)によっては、ある程度の角度がないと設置できないものがあります。
太陽光パネルなども屋根の角度によって発電量が変わりますので、そこはプロの意見に従うべきかと思います。
軒出について
軒出というのは、壁芯(柱芯)から屋根が飛び出している部分を指します。
上図のように固定資産税上は45cmが標準(1.0)で、短いほど安くなり、長いほど高くなる仕組みとなっています。
単純に安くしたいなら短くすればいいことになります。
しかし、屋根勾配同様、軒出にも重要な役割があります。
軒出があることで、雨水が直接外壁を流れる量を減らせるため、外壁にシミができにくくする効果があります。
窓を開けても軒出があれば、多少の雨なら吹き込むことを防げます。
軒出がないと屋根と外壁の接点部分に雨水が侵入しやすく、雨漏りの原因となりやすいです。
軒出の大きさによっては雨宿りも可能ですし、植木鉢などを置くのにも適しています。
直射日光が部屋に入り込むのを防ぐ効果もあります。
こちらも業者さんとよく相談されて作られることをおすすめします。
天窓について
屋根に天窓を作られる方もいらっしゃるかと思います。
掃除がしにくいとか、雨漏りのリスクがあるという意見もありますが、家の中に光を取り込むのに有効な手段ではあります。
固定資産税上、天窓があると別にポイントを取ることになります。
当然ながら、サイズが大きいほど高くなります。
開閉式のものはさらに高くなります。
まとめ 結局、固定資産税が一番安くなる屋根とは?
単純に屋根にかかる固定資産税額を抑えたいなら、陸屋根にして防水シートを貼るか、勾配屋根なら屋根材をアスファルトシングルにして勾配を緩やかにし、軒出をなしとすれば安くなります。
しかし、これまで説明してきたようにコストダウンにこだわりすぎるとデメリットもありますので、気をつけてください。
和風建築の住宅なら当然瓦を使いたいかと思いますので、その際は平板瓦や陶器瓦にされてはどうでしょう?
ソーラーパネルについては、屋根材そのものとしないほうが固定資産税上は安くなりますが、そこは工事費と比べてどちらが得かを考えるべきかと思います。
建てたい家の種類によって、慎重に考えてみてください。