新築注文住宅を建てるにあたり、「長期優良住宅」という言葉を聞くことがあると思います。
一体、どういう制度なのでしょうか?
元固定資産税担当者で700軒以上の新築住宅を見てきた元役人が解説します。
長期優良住宅とは?
長期優良住宅とは何か……ものすごく簡単に言うと、長いこと住み続けることが可能な住宅ということになります。
長く住み続けることができる住宅ということは、それだけ頑丈に作られていなければなりませんし、大きな地震にも耐えられる構造でなければなりません。
少し手入れするだけでリフォームなどが可能で、省エネ対策として断熱材などが使用されていることも条件となります。
とはいえ、このあたりを建築主が深く考える必要はありません。
長期優良住宅を建てたい旨を工務店や住宅メーカーの担当者に伝えれば、そのとおりに設計、申請、建築を行ってくれます。
ただし、得意としている業者とそうでない業者がありますので、そのあたりは確認しておく必要はあります。
大手住宅メーカーでは、セキスイや一条工務店、大和ハウスなどは、ほとんどが長期優良住宅ですね。
長期優良住宅のメリット
長期優良住宅最大のメリットは税金関係で優遇されることが多いことです。
いくつか説明します。
住宅ローン控除について
住宅ローン控除というのは、年末時点で残っている住宅ローンの額に0.7%をかけた数字分をその年の所得税から引けるという制度です。
最大13年間続けられます。
例えば、年末時点で2000万円の住宅ローンを残していた場合、控除額は2000万✕0.7%=14万円となります。
もし、所有者のその年の所得税が15万円なら14万円分を引いて1万円になるわけです。
このとき、長期優良住宅を建てた方の場合は5000万円までの住宅ローン残高までが対象になります。
長期優良住宅ではない一般的な住宅の場合は3000万円までです。
固定資産税の優遇措置
固定資産税では新築住宅を建てた場合、3年間住宅分の税額が半額になる制度があります(120㎡分まで)。
これが長期優良住宅の場合、5年間となります。
仮に固定資産税額が14万円の住宅の所有者であった場合、普通の住宅だと7万円✕3年間で21万の軽減となるわけですが、長期優良住宅の場合は7万円✕5年間で35万円の節約になるわけです。
※正確にいうと、固定資産税は3年に一度見直しがされるので、そのままの額にはなりませんが、ここではわかりやすいようにこう記しました。
不動産取得税の優遇措置
住宅を建てると固定資産税以外に不動産取得税というものがかかります。
固定資産税とは違い、新築時に一度だけかかる税金です。
このとき、控除額というものがあります。
市町村の固定資産税担当者が家屋評価を行い、計算をして評価額というものを出します。
その評価額の3%が不動産取得税となります。
仮に評価額が1,500万円だった場合、1,500万円の3%で45万円の不動産取得税となります。
高いな……と思われたかもしれませんが、ご安心ください。
控除する制度があります。
通常の住宅なら1,200万円、長期優良住宅なら1,300万円分が控除対象になります。
つまり、1,500万の評価額である新築住宅の場合、それぞれ控除すると通常の住宅なら300万円、長期優良住宅なら200万円分の不動産取得税を払えばいいわけです。
300万円の3%ですから9万円、200万円の3%なら6万円が不動産取得税となります。
大きな割引というわけではありませんが、長期優良住宅にしたほうが若干割引率が高いということになります。
登録免許税の割引
新築住宅を建てた場合、登記を行うわけですが、所有権保存登記や所有権移転登記にかかる登録免許税の税率が長期優良住宅の場合は少し安くなります。
通常の住宅の場合、保存登記が0.15%、移転登記0.3%です。
長期優良住宅の場合、保存登記0.1%、移転登記0.2%となります。
住宅の評価額が1,500万円だとすると、通常の住宅の場合、保存登記は1,500万円×0.15%で22,500円。
これが、長期優良住宅だと1,500万円×0.1%=15,000円となります。
7,500円の差ですが、何かと初期コストはかかるものですから、馬鹿になりません。
住宅ローンの金利優遇、地震保険料の割引
長期優良住宅の場合、丈夫なわけですから、住宅の資産価値が長期に渡り高くなるわけですが、そのため住宅ローンの金利優遇や地震保険料の割引が受けられます。
割引率は金融機関や保険会社によって違うので一概にいくらとは言えませんが、これも大きなメリットかと思います。
長期優良住宅のデメリット
何かと優遇のある長期優良住宅ですが、当然デメリットもあります。
手続きに時間がかかる
長期優良住宅としての認定を受けるため、関係機関に書類を提出し、審査を受けなければなりません。
これにかなりの時間がかかります。
混雑時期だと3ヶ月程度待たされることもあり、それまで着工できないわけですから入居予定時期が遅れることも。
子どもの学校などを考えて住宅を建てる場合、早めの手続き開始が必要です。
手続きに費用がかかる
関係機関の審査料は5万円程度なのですが、実際のところ、建築会社などでないと専門的な書類作成や手続きはできないわけで、そのぶん手数料を取られます。
相場としては20万円から30万円程度が目安です。
建築費用やメンテナンス費用が高くなる
長期優良住宅の基準を満たすためには通常の住宅よりも丈夫に作らなければならないわけですから、当然材料費や工賃が高くなります。
また、維持補修のためのメンテナンス費用も当然必要となります。
維持補修を怠ると認定を取り消される場合もあります。
まとめ・税関係を考えるとおすすめしますが……
メリット、デメリットを紹介しましたが、建築後の税関係やローンの金利を考えると長期優良住宅はやはりお得です。
ランニングコストは安くつくと思います。
しかし、建築するに当たり、初期費用はかなりかかります。
イニシャルコストとランニングコストとを天秤にかけて考える必要があります。
ハイブリッド車に乗るようなもので、ガソリン代は安くなるけれど車代が通常より高いとなると、元を取るのに何年乗らないといけないのか……と計算するようなものです。
それと、長期優良住宅を得意としている建築会社に頼まないと手続きひとつにしてもスムーズにいきません。
大手だと積水、一条、ダイワ、住友林業あたりですかね。
大手以外にも長期優良住宅を売り文句にしているメーカーがありますので、じっくりと選定することが重要です。
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