新築注文住宅を建てるにあたり、二世帯住宅という選択肢を考えている方もおられると思います。
元固定資産税担当者として、父親の退職金を頭金に二世帯住宅を建てられたという家族をいくつも見てきました。
当然、メリット、デメリットがあると思いますので一緒に考えてみましょう。
ちなみに二世帯住宅の税金は少し特殊な仕組みがあるので、それについても説明します。
二世帯住宅のメリット
幼い子どもが急に熱を出したけれど、今日は大事な会議があって会社を休むのが難しい……そんなときに世話をしてくれる親世帯が一緒に住んでいたら安心です。
保育園がコロナなどで急に休みとなっても、親世帯に家で見てもらうことができます。
保育園への送迎なども手伝ってもらえるし、帰りが遅くなったら食事の用意をしておいてもらえるなんてメリットも。
親世帯にもメリットがあります。
親世帯だって具合が悪い日があれば病院に送ってもらえるでしょう。
最新の家電を買ったけれど使い方がわからないなんて悩みも子世帯にすぐ助けを求められます。
しかも、二世帯住宅ならある程度は分離されていてプライバシーも守れます。
完全同居だと互いに遠慮しないといけない部分がありますが、二世帯住宅ならプライベート空間があるので居心地は悪くありません。
あと、ずいぶん先の話になりますが、いつかは親世帯が亡くなり、自分の子どもが結婚するときが来ます。
そのとき今度は自分たちが親世帯となるわけですが、子どもたちと一緒に暮らせるための家として用意しておけますよね。
代々、受け継いで行くことができるかもしれません。
二世帯住宅のデメリット
介護問題も保育問題も、親世帯が元気なうちはいいのですが、彼らが年齢を重ねて身体が弱って来ると子世帯の負担が増えて来ます。
それこそ親世帯が認知症になどなってしまうと……どちらの親かにもよりますが、世話をするために子世帯の夫婦どちらかが仕事を辞めることになるかもしれません。
老人介護施設にうまく入れることができれば悩みは少し解消されるでしょうが、となると、わざわざ二世帯住宅にしたのはなんだったのかという話になります。
親世帯と子世帯の仲が悪くなることも十分考えられます。
かわいかった孫もそのうち反抗期がやって来ます。
そのときに後悔しても取り返しがつかないことに……
二世帯住宅の場合、どのような作りにするかを慎重に考える必要があります。
余程広い土地を持っていて大きな家を建てられるなら別ですが、通常の一軒分くらいの土地に二世帯住宅を建てるなら、必然的に各世帯の面積が狭くなります。
また、駅から近いような土地なら別ですが、車がないと生活できない地域に住んでいるなら、車の駐車スペースを広めに作っておかないと複数台の車が停められません。
建設費も当然高くなります。
設備などが倍必要となります。
しかし、それは親子でローンを組むことで負担を減らすことができるのかもしれませんが……
二世帯住宅の税金について…固定資産税と不動産取得税
二世帯住宅の税金は少し複雑です。
以下に解説します。
完全分離型の間取りになっている必要がある
固定資産税、不動産取得税の新築軽減の対象にはなるのですが、部屋の間取りがポイントとなります。
新築軽減の恩恵を最大限受けたいなら、完全分離型の構造で建てる必要があります。
完全分離型というのは、極端に言えば、家を半分に切り取ってもそれぞれの世帯だけで生活ができるという構造になっていなければなりません。
また、少なくとも玄関とトイレと台所が2ヵ所以上必要です(風呂はなくても1ヵ所でもいい)。
親世帯と子世帯が建物上つながっていてもかまいませんが、扉一枚で隔れている必要があります(扉の有無については、市町村の固定資産税担当者もそこまで堅いことを言わない可能性がありますが、ある方が無難です)。
上の図のように玄関が別になっていて、各世帯に台所とトイレがそれぞれあり、ホールの扉だけでつながっているような造りなら大丈夫です(ただし、両方とも50㎡以上ないといけません)。
逆に、例えば1階が親世帯、2階が子世帯という場合、1階にある親世帯のリビングを必ず通らないと2階の子世帯に行けないというような構造になっていれば、完全分離型とみなされません。
完全分離型になっていない場合は普通の新築軽減しか受けられません。
二世帯住宅の場合、通常の家より大きい床面積になり、大体180㎡から240㎡くらいになる家が多いと思います。
これが完全分離型の構造であれば、固定資産税の場合、それぞれの世帯に最大120㎡までの軽減措置(最初の3年間か5年間半額)が適用されます。
つまり、親世帯と子世帯の床面積が90㎡と90㎡に綺麗に分かれている180㎡の建物なら、180㎡分全部の税金が一番高い最初の3年間か5年間半額となるわけです(5年間は長期優良住宅の場合)。
ですが、分離型でない場合、120㎡分までしか適用されません。
なので、最初の年から少し高めの固定資産税を支払うことになります。
また、もし建物の面積が280㎡を超えていて、完全分離型でない二世帯住宅はそもそも新築軽減が適用されません。
これは固定資産税の新築軽減における1軒あたりの床面積要件が「50㎡以上280㎡以内の建物に限る」となっているからです。
完全分離型でない二世帯住宅は2軒ではなく1軒として扱われてしまいますので、建てる場合は280㎡以上の床面積を超えないようにご注意ください。
※完全分離型でない場合、できることなら240㎡以下が理想です。理由は後述する不動産取得税の部分を読んでください。
二世帯住宅の場合、世帯それぞれの床面積にご注意を!
それぞれの世帯に120㎡までということは、最大240㎡までが対象となるわけですが注意していただきたい点があります。
例えば200㎡の家で親世帯が70㎡、子世帯が130㎡という場合、親世帯はまるごと半額となりますが、子世帯の方は120㎡分までしか半額になりません。
残り10㎡は軽減のない税額となります。
200㎡まるごとが半額になると勘違いされる方が多いので気をつけてください。
二世帯住宅の不動産取得税も床面積にご注意を!
一方、不動産取得税の新築軽減についても完全分離型でないと最大の恩恵は受けられません。
不動産取得税の新築軽減は評価額から1,200万円(長期優良住宅の場合は1,300万円)を引き、その範囲内に収まれば0円となる措置です。
1,200(1,300)万円を超えても、超えた分の額だけに対して3%がかかるという仕組みとなっています。
これが完全分離型の二世帯住宅だとそれぞれの世帯に対し1,200万円または1,300万円の軽減が適用されるのですが(つまり最大2,400万円か2,600万円)、完全分離型でない場合は1,200(1,300)万円までしか適用されないことになります。
床面積の大きな家は当然、評価額も高くなりますので高めの不動産取得税を払うことになります。
こちらも面積要件という怖い罠がありまして、不動産取得税の新築軽減が受けられる面積は50㎡以上240㎡までとなっています。
(固定資産税の新築軽減は280㎡まででしたが、こちらは240㎡までなのでご注意ください。)
つまり、床面積が240㎡を超える二世帯住宅を建てても、完全分離型でない場合は不動産取得税の新築軽減措置が何も受けられないことになります。
例えば250㎡の完全分離型ではない二世帯住宅を建てて評価額が2,500万円とされた場合、2,500万円の3%、すなわち75万円もの不動産取得税を払うことになってしまいます。
これは馬鹿にならない金額ですよね……
まとめ・税金の軽減を取るか建設費を取るか……
二世帯住宅の税金が複雑で、場合によっては高くなると説明しました。
しかし、不動産取得税は1回限りの税金ですし、固定資産税の新築軽減も3年か5年にすぎません。
完全分離型の二世帯住宅を建てるとなると、玄関もトイレも台所も二ヵ所以上作らなければなりませんし、風呂は要件にないとはいえ現実的には2つ作ることになるでしょ
う。
となると、建築費がかなり高くなる可能性があります。
完全分離型にこだわると間取りにも制限ができてしまいます。
高い税金を払うのは悔しいと思われるかもしれませんが、もしかすると税金が高くなっても建築費を安くするほうが得なのかもしれません。
このあたりは建築会社とよく相談されることをおすすめします。
ご自分のライフプランにあった家を建てられるのが一番です。
二世帯住宅の建築を考えておられる方には下記のサービスをおすすめします。
希望を伝えるだけで、複数の有名建築会社が間取りや見積もりを無料で提案してくれるサービスです。
一度のぞいてみてください。